HERM餞,FRANCE. PRICE: F 630.00
『 シフレ(ドッグ・ホィッスル)』エルメス、フランス。全長:笛 7.5 cm・紐 45 cm、素材:水牛の角(笛 )・牛皮(紐 )、価格:630.00フラン。
 これは全世界の女性のあこがれのブランド、あの「エルメス」の犬笛です。「SIFFLETS(シフレ)」とはフランス語の「笛」という意味です。エルメスと言えば超高級のバッグで有名ですが、もとは馬具商が始まりだったことは良く知られていることです。創業者であるティエリ・エルメス( 1801〜 1878 )は馬具商の見習いから始め、1837 年に王侯貴族のための高級馬具商として シャンゼリゼ通りで創業しました。彼の丹念な技術と高品質なモノづくりの哲学を物語るエピソードに次のようなものがあります。1867 年のパリ万博に初めて出展した彼の「鞍」が銀メダルを獲得しました。当時「馬具屋」より「鞍屋」の方が地位が高く、これを機に「鞍屋」としてスタートするように後継者である長男のシャルルにすすめられましたが、金賞をとるまではと、彼は断りました。そして1878 年のパリ万博では、エルメス出品の鞍はついにグランプリに輝いたのです。しかし、その栄光のわずか3か月前にティエリはこの世を去りました。その後、エルメスは常に金賞を獲得していたそうです。産業革命以後、馬が自動車に変わり、エルメスの商品も馬具から婦人用鞄が主流となりました。この商品「シフレ」は馬でのハンティング道具として、昔からある定番の一つです。当時の狩りの方法として、馬と人間と犬が一つのグループを作り、それぞれのグループが、役割を持ち、グループ同士の連絡の道具として、3種類の「笛」を使い分けました。遠くのグループに獲物の場所を知らせるための2種類の大きな笛(コーリング・ホーン)と、犬をコントロールするためのこの「シフレ」がありました。エルメスでは今でもこの「シフレ」(ドッグ・ホィッスル)の他に大・中2種類のコーリング・ホーンを馬具部門として作り続けています。また、エルメスの商品、例えばスカーフやカップ&ソーサーなど、の絵柄には、猟犬や作業犬しか使わないという徹底したこだわりがあります。このように、エルメス創業者ティエリの完璧な技術と作品としての芸術性、そして「馬具商」としてスタートした「職人」としてのこだわりが受け継がれているからこそ、名実ともに最高級のブランドとして、現在のエルメスがあるのだということを実感できます。さらには、この地球上の最も古いパートナーである「ヒト」、「ウマ」、「イヌ」をつなぐ道具として、なにか深い「哲学」をこの「シフレ」に感じてしまうのです。
雑誌『WAN』(ペットライフ社刊)1998年3月号掲載