LATE FOR THE SKY PRODUCTION CO.,U.S.A. PRICE: $ 24.95
  『ドッグ・オポリー』。レイト・フォー・ザ・スカイ・プロダクション社製、アメリカ。これは世界的に有名なボードゲーム『モノポリー』の犬版ゲームです。
  原型となっている『モノポリー』は、その名の「独占」という意味が示すように、財産を独占して他のプレーヤーを破産に追い込むことを目的としたゲームです。1935年にペンシルバニア州のチャールズ・ダロウ氏によって作られた不動産取り引きゲームで、現在までに世界80カ国に20億個以上販売され、およそ50億人がプレーしたそうです。この『モノポリー』には、スタンダードタイプだけで26カ国語版もあり、それ以外でも「ディズニー版」、「ポケモン版」、「スターウォーズ版」などのキャラクターものや、「アメリカ国立公園版」、「コカコーラ・コレクターズ版」、「ワールドカップ’98フランス大会版」などの限定版、さらには物件がプロバイダ等になっている「ドットコム版」や日本の「お台場バージョン」などの数え切れないほどバリエーションが発売されています。1978年の第一回世界大会をかわきりに、定期的に『モノポリー』世界一を決める大会が開かれています。日本でも数多くの愛好家がいて、「日本モノポリー協会」という団体があり、現在の会長は1991年に開かれた第8回世界大会日本代表にもなった糸井重里氏(日本モノポリー協会のホームページ[『ほぼ日刊イトイ新聞』内]:http://www.1101.com/monopoly/index.html)。日本のレベルは世界的にもとても高いらしく、過去に2回(1988年・2000年)日本人が世界チャンピオンになっています。ゲームのルールに関してはご存じの方も多いかもしれませんが、簡単に説明します。各プレーヤー(通常5〜6人)が現金1500ドルを持ってスタート。40マスで構成された正方形のゲームボードをさいころ2つを使って駒(トークン)を進め、止まったマスの土地・鉄道・電力会社・水道会社の権利書を購入したり、その所有者にレンタル料を払ったりしながら資産を競います。しかしこのゲームの醍醐味は、サイコロ運が大きく左右するボード上の「すごろく的」な競技にだけではなく、各プレーヤー同士の「交渉」にあるようです。このゲームはある一定の区域(8つ色分けされた「カラーグループ」)を押さえないとその物件が発展していかないため、「交渉」によって交換・売買をおこない「カラーグループ」を獲得していくのです。その交渉過程でそれぞれの人間の戦略と個性が交錯するところに、このゲームの深さがあるようです。
  さてこの『ドッグ・オポリー』も基本的なルールは同じですが、モノポリー犬版としていろいろと工夫されています。真鍮製の6つの駒(トークン)は、フードボウル、生肉、消火栓、ノミ、猫、郵便配達人など、どれも犬にまつわるアイテム。オリジナルでは土地などになっているところが、このゲームではいろいろな犬種(22犬種)の犬になっています。犬の権利書には基本的な犬種の情報だけでなく、たとえば「ボクサーは前足を使って遊んだりケンカしたりするのでそのように呼ばれた」とか、「プードルはドイツ語の『プーデル』という水にバシャンと飛び込むという意味から名付けられた」など、犬種の雑学的な情報も載っていて意外と勉強になっておもしろい。各プレーヤーは1630ドル(なぜか半端な金額)でゲームスタート。未所有のマスに止まったらその犬の権利書を購入できます。また「バッド・ドッグ」(オリジナルでは「各人に$50ずつ支払う」などのチャンスカード)や「グッド・ドッグ」(オリジナルでは「各人から$50ずつ受け取る」などの共同基金カード)のマスに止まったら、それぞれのカードを引き、「ノミがついて検査のため$50支払う」や「オビディエンス・クラスで優勝。$25受け取る」など指示に従います。さらに8つある「カラーグループ」のいずれかを独占できた場合は、その区域の各マスに4つまで「ドッグハウス」(オリジナルでは「家」)を購入し建てることができ、4つの「ドッグハウス」があるマスには建設費を支払うことで、「ビッグ・ボーン(大きな骨)」(オリジナルでは「ホテル」)を建てることが可能になり、そのマスに止まる他のプレーヤーからより多くのレンタル料を獲得できるようになるのです。オリジナル同様、「カラーグループ」獲得のため、「交渉」によって犬の交換・売買をしますが、このゲームをするのは当然愛犬家たちなので、自分のお気に入りや飼っている愛犬の犬種を獲得したくなるのが当たり前。そのためオリジナル版とは違う熱の入り方になりそうです。ちなみに蛇足ですが、猫版の『キャトポリー』もあるようです。
 『モノポリー』が生まれた時期が「大恐慌」のピークだったにもかかわらず、このゲームがアメリカ資本主義の縮図であることに、とても皮肉なものを感じます。20世紀は経済だけでなく社会全体が「独占欲」と「駆け引き」の時代だったように思えます。そしてそのために行き詰まってしまったことに、私たちの多くが気づき始めたはずです。だからこそ21世紀は「愛と調和」の時代に!と、たかがゲームの話なのに大袈裟なことを言ってしまいましたが、この「愛と調和」は私たちが犬たちから学べる一番大切なもの。明るい21世紀のために、利己的なことはせめてゲームだけにとどめておきましょう、愛犬家の皆さん。





これは雑誌『DOG days』Vol. 12 (2002年4月発行)に掲載されたものです。

『犬物商品文化研究所』は1995年1月から雑誌『WAN』(ペットライフ社刊)に5年間(60回)連載しました。
その後、雑誌『DOG DAYS』にパート2として2001年1月から連載がはじまり、現在も連載中です。