GEOBRA, Brandstater,Germany. PRICE: $ 1.00〜
 『プレイモビル 』。ジオブラ社製、ドイツ。大きさ:約75mm(人形)。素材:プラスチック。価格:1.00ドル〜。これはドイツ生まれの子供のための知育玩具です。このプレイモビルは単体の人形として、ヘアスタイルや衣装、持ち物(パーツ)などを変えて遊ぶだけでなく、過去(海賊・ウエスタン・騎士など)、現在(農場・レジャー・レーシングなど)・未来(スペースなど)の3つテーマから発生した商品(セット)が500種類以上もあり、それらのセットを自由な発想で組み合わせることで、さらに大きな町や物語を展開することができます。その中で「イヌモノ」がたくさんあるのです。写真のセットは「農場シリーズ」のうちの一つ、「農夫と犬たち」。セントバーナードらしき大型犬と子犬たちの世話をする結構おしゃれな農夫。ちょっと「アルプスの少女ハイジ」の「アルムおんじ」と「ヨーゼフ」を想像してしまいます。
 この「プレイモビル」はよくデンマークの「レゴ」のライバルといわれますが、ジオブラ社の創立は今から120年以上も前の1879年、レゴ社よりも古いのです。(ちなみにレゴ社 は大工の棟梁オーレ・キアク・クリスチャンセンによって1932年に設立されました)創立者は鍛冶屋のアンドレアス・ブランドスタッター氏。息子のジョージ・ブランドスタッター氏の代に電話機やレジスターやオモチャの部品などを作る会社として大きく成長し、社名も自分の名前を短くした「ジオブラ」に変えました。1958年にはフラフープが世界的ブームになり、それを大量生産できたおかげでジオブラ社は 経済的に成功しましたが、あっという間に去ったブームの後業績は低迷、さらに1970年代初頭のオイルショックで大打撃を受けました。そんな頃当時開発部にいたハンス・ベック氏がパーツによっていろいろ変化(変身)し、各部を動かすことができるプラスチック製の小さな人形とそのサイズに合わせた乗り物や建物のシステムを考え出し、「プレイモビル」は誕生しました。1974年にドイツ、ヌレンバーグのトイショーで初めて発表し、世界的に人気を博してジオブラ社の危機を救ったのです。いまではヨーロッパはもちろん北米に会社を設立し社員数は全世界で約2500人というビッグ・カンパニーに成長しました。しかも1990年代に入り、「プレイモビル ファンパーク」というプレイモビルのテーマパーク&ショップを、地元ドイツをはじめギリシャ、フランス(パリ)、アメリカ(フロリ ダ州ウエストパームビーチとオーランド)にオープン。まさにプレイモビル帝国と言えますね。
 日本でも10年以上前にデビューしたのですが、あまり注目されず数年で撤退してしまいました。しかし昨年再度正式輸入されるようになり、10代後半から20代前半のオシャレなコたちがプレイモビル注目し始め、コレクターも続々と増えているらしく、すでに昔のレアモノにはかなり値がついているとか。彼らの間では「プレモ」の愛称で呼ばれ、来年にはポスト・レゴとしてさらにブレイクするのではないかとウワサされています。これには2,3年前に流行った「ペッツ」ブームに通じるものを感じます。オシャレでかわいい「トイ」を「インテリア雑貨」として飾って楽しむ。昨今のトイブームはこの「ディスプレイ・トイ」としての要素が強いのです。GIジョーやスターウォーズものなどのアクション・フィギュア系には男性コレクターが多いのですが、「ペッツ」やこの「プレイモビル」には女性コレクターがたくさんいます。それはかわいいデザイン・色・楽しいシチュエーション設定の魅力にひかれてのことでしょう。
 それにしても「プレモ」の人形たちは丸い顔に丸い目でいつもニコニコしています。セットの中にはおどろおどろしい中世の戦争や手術室を舞台としたものもあります。しかし、剣を振り上げて敵を討とうとする戦士の顔も、倒れて死んでいるはずの戦士の顔も、オペ室で手術を受けている患者の顔も、執刀している外科医の顔も、みんなみんなスマイリー。これってけっこう変です。素材がプラスチックであることも手伝ってか、この人形がとても無機質に感じてしまうのは私だけでしょうか。
 多くの名犬種を生み出したドイツのオモチャだけあって、写真の商品の他にも「牧羊セット(ホフヴァルトっぽい)」、「ウサギ小屋セット(ダックス)」、「警官と警察犬セット(ジャーマン・シェパード)」、「山岳救助隊とレスキュー・ドッグセット(なぜかロットワイラーっぽい)」、車でショッピングに来たお母さんと女の子の「シティライフセット(ダックス)」などがあり、登場する犬種を細かくチェックしていくとドイツ犬種へのこだわりがあるかのようです。ドイツ犬種が好きな方は是非ともコレクターになってみてはいかがでしょう。


プレイモビル公式サイト(英語他):http://www.playmobil.com
プレイモビル ファンクラブ(日本語):http://www.playmobil-fanclub.co.jp/





これは雑誌『DOG days』Vol. 6 (2001年1月発行)に掲載されたものです。

『犬物商品文化研究所』は1995年1月から雑誌『WAN』(ペットライフ社刊)に5年間(60回)連載しました。
その後、雑誌『DOG DAYS』にパート2として2001年1月から連載がはじまり、現在も連載中です。